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公図に大きなずれがある地域は50%?!

2012.07.20

皆様、土地家屋調査士という国家資格をご存じでしょうか?土地家屋調査士とは、不動産の登記簿(登記記録)の「表題部」の新設、変更・更正、閉鎖等の代理申請を行う土地建物の表示登記の専門家です。

 

我々土地家屋調査士が、相続の関係でお世話させて頂く場合で多いのは、相続人の間で土地を分けあう為の分筆登記を行う時や、相続税の物納の為の土地の境界確定測量、地積更正登記を行う時です。この分筆登記・地積更正登記を行う上で、前提として通常境界確定測量を行わなければなりません。

 

前回は境界線の立会のお話をさせて頂きました。今回は、公図についてのお話をします。

一般的に公図は「字図」と呼ばれています。土地の境界線と言えば、一般の方が最初に思い浮かぶのは「字図」だと思いますが、法務局には、「14条地図」というものがあることをご存じですか?14条地図とは、不動産登記法14条で定められている現地復元性の高い図面です。

最近は福岡市でも14条地図整備が進んでまいりましたが、いまだに福岡市では公図(地図に準ずる図面)地域が多い現状です。一般的に、14条地図の事も「字図」と呼ばれている現状があるので、公図とは何のことなのか、分かりにくいと思います。

 

◇法務局で取得出来る「地図」及び「地図に準ずる図面」の概要

◆地図

14条地図の事である。国土調査(地籍調査)や区画整理などに基づいている為、現地復元性が高い。

◆地図に準ずる図面(公図)

一般的に字図と呼ばれ、現地復元性に乏しい。土地の形状の概略や隣接土地の位置関係の概略を表すものとされる。

 

では、この一般的に字図と呼ばれる事が多い「公図」とは何なのでしょうか?

 

かつて、土地の大部分は農地であり、領主、支配者は農民から年貢を徴収して財源を賄っていました。

日本において土地の近代的所有権が確立したのは、明治維新後です。明治4年、廃藩置県が行われ、明治5年、土地売買の自由が認められ、官有地、私有地などに地券が発行されました。

明治6年、地租改正の太政官布告がなされ、全国的に土地調査と地価の確定が行われました。当時、私有地の8割は農地であり、一筆ごとの測量が行われ、市街地の宅地についても地券が発行されました。

 

農民の抵抗が予想されたためか、この測量はほとんどを民間に任せ、明治14年、極めて短期間でこの事業は終わりました。当時、測量方法は十字法、三斜法という原始的なもので、目測、歩測に頼ることもあったそうです。この測量においては一筆の土地の位置、形状、地番、面積を記載した「野取図」または「一筆限図」が作成され、これを字単位に連合した「字限図」、村単位に連合した「村限図」が作成、提出されました。

これらの絵図は「野取絵図」または「字図」と総称され、「公図」の原型となりました。

 

さらに、粗雑な絵図を改訂するため、明治18年から22年にかけ、絵図の更正がなされ、作成された地図は、「更正図」と呼ばれました。明治22年、地券制度は廃止され、土地台帳が課税台帳となり、この「更正図」が土地台帳付属地図、「公図」となりました。その後不動産登記法の改正等で法務局が公図を扱うようになりました。

 

すなわち、IT社会と言われるこの平成の世において、法務局で発行されている「地図に準ずる図面」の原型の多くは、なんと明治時代に出来たものであるということです。

福岡市のような都市部では、全国的にも国土調査(地籍調査)が進んでおらず、「地図に準ずる図面」の地域が大多数を占めています。(地図に準ずる図面の中にも、地籍調査の図面や、区画整理の図面、大規模な分譲の際の図面が基となった場合もあり、比較的現地復元性が高い図面も存在します。)

 

また、全国の都市部では正確な地図がある地域は20%程度と言われています。さらに、国土交通省のデータでは、「全国的な公図と現況のずれの傾向」として、

 

◆ずれが10?未満の精度の高い地域    ・・・5.5%

◆10?以上1m未満のずれがある地域   ・・・42.2%

◆1m以上10m未満の大きなずれがある地域・・・49.8%

なんと全国の公図地域の約50%は、公図の形状と現地の形状に1m以上の大きなずれがあるということです。「字図は合わない」とよく聞かれると思いますが、データ的にもそのようです。

 

また、地図・地図に準ずる図面にあわせて、土地の一筆ごとの位置、形状を表す公的資料として、地積測量図があります。このような地図に準ずる図面の地域でも、「分筆登記」や「地積更正登記」の際に、我々土地家屋調査士が現地調査・測量を行い、第三者対抗要件を備えた図面の作成、提出をしています。

 

相続による売買や分筆の際、境界立会を行いますが、「地図に準ずる図面」の地域の場合、現況構造物の築造の経緯や境界標識の有無などが重要になってきますので、その時になって慌てる事がないように、帰省された時などに親子間で土地の境界線のお話をしておくことをお勧めします。

 

江藤土地家屋調査士事務所(福岡市博多区)

土地家屋調査士 江藤剛

趣味:美味しい物を食べること。福岡をこよなく愛すること。

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筆者紹介

江藤 剛
土地家屋調査士

事務所理念
◎お客様の大切な不動産の取引・管理に関し、正確かつ迅速なリーガルサービスを提供します。

◎常にお客様や関係する方々の立場に立ち、丁寧且つ真心溢れた業務や相談サポートに努めます。

不動産という高価な財産における不動産表示登記に関し、依頼者の権利の保全の為に登記申請や測量を行う土地家屋調査士にとりまして、正確な知識に裏付けされたリーガルサービスが基本となります。その上で迅速に業務を完遂し、お客様に権利の保全と安心を提供します。また、専門的な知識が多い不動産登記や境界確定測量に関し、丁寧且つ真心溢れた相談サポートを提供します。

例えば、お客様が永続的にお住まいになる住宅の測量業務などでは、隣接者や官公署などと境界トラブルや越境によるトラブルなどが残らないように慎重に業務をすすめる必要があります。お客様の「大切な不動産に将来的な安心を」ということを常に考えながら業務を遂行していきます。
土地の取引では不動産取引が将来に関しても安全に行われる業務や相談サポートを提供致します。
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