【ご相談内容】
福岡市在住のAさんから、下記のようなご相談を承りました。
『 先日、家内が他界いたしました。
家内の名前の銀行預金にそこそこの金額が残っています。
他に相続(税)の対象になるようなものはないと思います。
私どもには子供はいません。家内に兄弟姉妹はいないのですが、家内の両親は健在で、北海道に在住しています。
しかし、家内の両親とは不仲で、10年以上連絡をとっていない状態です。
家内が亡くなったこともまだ伝えていません。
今後、どのような手続きが必要でしょうか。 』
【回答】
子供のない夫婦(Aさん・Bさん)のうち、Bさんが亡くなった場合には、まずAさんが法定相続人となります。そして、Bさんの両親が生きていれば両親、両親が既に他界しており、Bさんに兄弟姉妹がいればその兄弟姉妹も法定相続人となります。従って今回のご相談事例では、Bさんの相続人はAさんとBさんのご両親(Cさん・Dさん)の3人ということになります。
この事例でまず確認すべき事は、奥様が遺言書は残されていなかったか否かです。奥様が遺言書を残されていればそれに従って手続きを進められる場合があります。
しかし、遺言書が無い場合には、財産を相続するに際し法定相続人全員による『遺産分割協議』の作成が必須となります。
遺産分割協議書の作成には、以下の行為がBさん・Cさん・Dさんの3人全員で行われる必要があります。
遺産の分け方について話し合いをし、合意をする
合意内容を書面(遺産分割協議書)に残す
書面に各自が署名・押印(実印)をし、印鑑証明書を添付する
Aさんはご両親とは不仲とのことですが、だからといって話し合いを避けることは出来ません。遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書等を銀行に提出しなければ、 預金の引き出しや名義変更も出来ないからです。
法定相続分は、ご主人様が遺産の2/3、ご両親が1/6ずつです。
しかし、全員の合意さえあれば法定相続分にこだわる必要はまったくありません。
Aさんが100%相続しても、ご両親が100%相続しても、とにかく自由です。
ただし、話し合いがまとまらなかった場合は法定相続分を目安に分けることになるでしょう。
また、銀行口座の預貯金を含めた遺産総額が4,800万円を超えるようであれば、相続税がかってきますので、相続税の申告手続きが必要となってきます。
【このような場合には】
子供のいない夫婦に相続が発生した場合、配偶者のご両親や兄弟と相続手続きを共同して行わなければならない場面が大半となります。
亡くなってしまった配偶者の財産分けを、自分からすると血縁関係のない配偶者の家族と行う事は精神的にもなかなかパワーのいるものではないでしょうか?
AさんのようにBさんのご両親と不仲である場合や、ご家族が遠方に住んでいらっしゃる場合にはなおさらです。結局AさんはBさんのご両親に主張され、法定相続分通りに遺産分割する事になりました。10年以上も音信普通だったにもかかわらずです。さらに遺産分割協議書に印を押して印鑑証明書を送ってもらうまでに1年もかかってしまいました。
このように、子供のいない夫婦の方は、自分に万が一の事があった場合に配偶者が困らないよう、公正証書遺言を作成しておく必要があります。そうすれば、残された配偶者の手続き負担は格段に軽くすることが出来ます。